14日から始まった国勢調査。日本に住む全世帯参加のはずだが、申告通り集計されない人たちがいる。それは、同性のカップルだ。

【映像】国勢調査で集計されず…同性カップルを取材

 国勢調査票には「男女の性別」と「世帯主との続き柄」をマークする欄がある。しかし、1人目の欄で「男(女)」を選んで世帯主とし、2人目の欄でも「男(女)」を選んで「世帯主の配偶者」とする例について、高市総務大臣は「いわゆる同性パートナーの可能性があるものについては、国勢調査の婚姻関係とは区別する可能性があるので配偶者とはされないが、一方で同一世帯を構成していることを踏まえ『他の親族』に含めることとしている」と説明した。

 他の親族は、同一世帯に暮らす「叔父や叔母」「いとこ」などと同じカテゴリーで、配偶者を指すものではない。つまり日本では、生計をともにして暮らす同性のカップルが何組いるのか、集計されていないのだ。

 一方で、LGBTは決して数少ない存在とは言い切れない。LGBT総合研究所が2019年4月から5月にかけて全国の20~69歳の男女約42万人を対象に行った「LGBT意識行動調査」では、全体の約10%がLGBTや性的少数者に該当した。

 『ABEMAヒルズ』が取材した近藤佳さん、今井美亜里さんもそのうちの1組だ。3年前に出会って交際を始めた、佳さんと美亜里さん。戸籍上は女性同士の2人は、愛犬のサンゴちゃんと一緒に暮らしている。美亜里さんは、性別を男女どちらか一方に限定しない「Xジェンダー」。佳さんは「パンセクシャル」という、「男女という性別の枠にとらわれず、好きになった人が好き」という性的指向だ。

 帰りの早い佳さんが食事を作り、美亜里さんが帰ってきたら晩酌をして、テレビを見ながらその日あったことを報告する。「異性の夫婦と何も変わらないと思う」と話す2人は、世間から家族として認められることを強く望んでいる。きっかけは、美亜里さんの急病。当時、仕事中だった佳さんが連絡を受け自宅に駆け付けると、ちょうど美亜里さんが救急車で搬送されるところだった。

 「お腹がすごく痛くなった時があったんですけど、尋常じゃない痛みだったので救急車を呼んで。自分は痛みでもうろうとしていて、(佳さんが)『パートナーです』って言ったのがうっすら聞こえたんですけど、(救急隊員が)『じゃあ友人ということにしておきましょうね』って。自分がこれからどうなるかわからない、そういう状況で…」(美亜里さん)
 「私は友人にされたんだな、私はないものみたいな感じになっていて。これは自分が強行突破していかないと彼女が死んだ時に死に目に会えないなって思って、グイグイいっちゃいましたね。じゃないと後々自分が後悔する」(佳さん)

 今年の4月、住民票のある文京区パートナーシップ宣誓制度が導入されたことで、早速利用した2人。しかし、この制度に法的な効力はない。世帯ごとに申請する新型コロナウイルスの特別定額給付金もそれぞれ申し込んだ。2人が“家族”として扱われたことはないという。

 「パートナーシップをして、一世帯としてみなされていると思っていたんですけど、やっぱり別々っていう。記念ではなく、何かしら変わるんじゃないかと思って私たちは(パートナーシップを)したんですけど、今のところ思い出だけで終わってしまっている」(佳さん)

 パートナーシップ宣誓制度には限度がある。そして、同性婚の制度がない日本では、生計をともにしていても国勢調査で配偶者として集計されない。「存在しないものにしないでほしい」という思いを口にする。

 「どれだけの人が婚姻関係を求めているというか、家族として認められることを求めているとわかってほしいです。私たちは男女のカップルと変わらないような結婚として認められたい。一緒に貯金をして、将来のことを考えて、お互いの両親のことを考えて、兄弟とも仲良くして。私たちは結ばれていないから家族じゃないっていうのは、ちょっと違うでしょって思いますね」(佳さん)

 法的に認められなくても、せめて気持ちだけは。そんな思いから、2人は佳さんの父親に婚姻届けを持ってカミングアウトした。

 「『(私たちを)婚姻関係として認めてほしい』って父に話して、(父は)『それなら』と実印とか持ってきてくれた」(佳さん)
 「(婚姻届には)証人の部分とかもあるので、それは感慨深いものがありました。自分は幼いころからLGBTと言われる中で生きてきたので、やっぱり結婚というのは大きいんですね」(美亜里さん)

 婚姻届は、本来なら文京区役所に出したい。佳さんと美亜里さんの夢は「結婚すること」だ。

 「結婚したいけど、結婚したいが大きな夢っておかしいよね。そういうのが残らないっていうか、家族になれずに死ぬっていうのはつらすぎるので」(佳さん)
 「でも(以前よりは)ちょっとずつ期待ができるようになってきたかな。それだけでも感慨深いところはあります。期待はしている」(美亜里さん)

 こうした思いを抱えた多くの人たちが、まずは国勢調査で存在を集計してほしいと立ち上げた社会プロジェクトがある。その名も「レインボー国勢調査プロジェクト」。そこに唯一、都道府県単位で賛同している首長が茨城県の大井川和彦知事だ。

 「国勢調査においても、そういう方々が実態に合わせて参加できるという趣旨に賛同して、我々としても応援するということをさせていただいた」(大井川知事)

 茨城県では去年7月から、パートナーシップ宣誓制度を導入した。県単位では初の取り組みで、反対の声も根強かったという。

 「茨城はどちらかというと保守的な風土、県。LGBTって聞いたことないとか、知っていたとしても詳しく知らないからとなんとなく偏見を持っていて、『近寄りがたい』『受け入れがたい』という反応を示された人がたくさんいた。『県民の理解が進んでいない、時期尚早じゃないか』という声が(議会などでも)一部で非常に強かった」(同)

 それでも推し進めた理由は、「政治家としてやらねばならない」という思いから。結果として、茨城県内ではLGBTに対する理解が深まったという。一方で、自治体としてできることはパートナーシップ宣誓制度を導入するのが限度だという。同性婚を認めるためには民法の改正などが必要で、国が動かなくてはならない。

 「社会的な過去、歴史的な価値観というものが時代に合わなくなってきている部分はあると思う。日本も大きく変わっていかなければならないのでは」(同)
 

■法的な問題は? 人々の“心理的な抵抗”も壁に

 国勢調査が申告どおり集計されないことに法的な問題はないのか。男性生まれの女性弁護士である仲岡しゅんさんは次のように話す。

 「国の見解としては、同性婚が認められていない以上は国勢調査も法令に基づいて集計されなければいけないと。異性カップルであれば事実婚の場合であっても集計されるのに、同性の場合では集計されないという不平等な扱いがあるのは問題だと思う。しかし、それに対して何らかの訴訟ができるかというと、本人たちが具体的に何らかの損害を被っているかというところで難しい面がある。ただ、『こういうことをしなさい』という形の行政訴訟は考えられなくはないと思う」

 また、民法で同性婚が認められていないことに疑問を呈した。

 「(同性婚が認められて)幸せになる人がいても、それで不利益を被る人はいないと思う。同性カップルは婚姻関係が認められれば相続ができるし、逆に異性カップルに損害は生じないと思う。同性婚を認めていくことは世の中を幸せにする効果があるわけで、認めないのは逆に疑問に思う」

 一方で、明星大学准教授で臨床心理士の藤井靖氏は、身近にいる性的マイノリティーの人の反応から「諦めている人が多いのではないか」との見方を示す。

 「こういう問題をどう思うか聞いてみると『別にどっちでもいい』と話す方が多いように感じるが、それはあまりにも国や周囲の理解がないために諦めて言っている表面的な反応のように思う。国勢調査は国に自分の存在が認められているかどうかというアイデンティティの問題であり、今の国勢調査は生物学的なものだと思うので、選択肢を増やせばいいだけだ。いろいろな方に配慮した新しい方法で国勢調査をやるべきだと思う」

 藤井氏は「『伝統だから』『少子化が進むから』と反対する人はいるが、これは反証や対策が可能で、些細な問題と思っている」とする一方、人々の“心理的な抵抗”が一番の問題だと指摘した。

 「マジョリティーである異性愛文化の人からすると、自分たちと同性婚を一緒にされたくないというような、理屈にかなっていない単純な感情論がある。論理で対話できるものではないので、それを納得させるのが一番難しく、社会の多様化を進める上でどうしたものかと僕もいつも考えている」

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)
 
「結婚が大きな夢っておかしい。家族になれずに死ぬのはつらすぎる」 国勢調査で集計されない“同性カップル” 強く願う“家族”のかたち